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ウクレレの選び方<3>

ウクレレの選び方<3>
メーカー別の特徴
ご訪問ありがとうございます。

さて、前回はウクレレの細部の話をしましたが有名メーカーでも標準とは違う寸法や構造を採用していることは珍しくありません。そこで、前回内容と一部重複しますが著名メーカのウクレレの特徴をまとめてみます。

●T's
個人製作家を除き、日本における法人ウクレレメーカーはT'sとフェイマスが二大メーカーと言えるでしょう。そのうち比較的高級機(といってもハワイ製よりよほど安い)はT's、比較的廉価機はフェイマスが棲み分けしているように見受けます。両社ともその製品の評価は高いです。
ただし、高級機分野ではやはりハワイ製が人気があるし、廉価機分野では中国やベトナムなどアジア製の追い上げが激しく、両者ともこれから先の方向性を模索しているところではないでしょうか。
さて、T'sですがこのメーカーのウクレレはネックが細いという特徴があります。1フレットあたりの最薄部で、他社標準は18mmくらいのところが16mmになっています。
作り込みはかなり高品質で全般にラフなハワイ製を凌駕しています。

●フェイマス
フェイマスは初心者に絶大な人気とシェアを誇っています。その中でもFS5という機種が看板商品となっているようで、初めてのウクレレで迷ったらFS5、という人も多いようです。
フェイマス製ウクレレの特徴はネック幅が広いことで、他社標準は35mmくらいのところが37.5mmになっています。初心者にとってはこれが逆に弾きやすく感じるのかもしれません。
それからもうひとつ、すべての機種ではないかもしれませんが、マイフェス製には力木が大胆に省略されています。力木は主に二種類あって横方向に横断する強度確保のためのものと、表板のブリッジ下に縦方向に設けられブリッジの振動を表板にバランス良く伝達させるためのものがあります。
フェイマス製では表板には前者(横方向)の二本が設けられているだけで、裏板には力木が全くありません。
ブリッジ下の力木は弦楽器の音色を左右する重要要素とされているのに、これを省略するのは大胆だと思います。
フェイマスウクレレは合板機が多いのですが、合板ゆえに強度が確保されているのでしょう。また、力木の省略でコストダウンが図られているのだと思います。

●カマカ
ウクレレの王様です。カマカ以外はウクレレと認めないという人もいるようです。
ちなみに、世界のウクレレ二大メーカーはカマカ(ハワイ)とマーチン(アメリカ本土、メキシコ)でしょうか。カマカはコア材が得意でマーチンはマホガニー材が得意です。
そして、三大ハワイメーカーはカマカ、コアロハ、Gストリング(最近はGストリングに代わってカニレアかも)と言われます。いずれにしろカマカはウクレレ界の巨人でして、あの音色はカマカ以外には出せないのではないでしょうか。
そんなカマカですが、ブリッジ上の弦間隔がやや広めです。他社標準で40~42mmのところをカマカは45mmくらいありますので注意が必要です。

●マーチン
前回のブログで「ウクレレにはディフェクトスタンダードが存在しない」と述べましたが、あえて標準を挙げるとすればマーチンがそれに該当すると思います。ピーナツ型(だるま型でない)のボディと12フレット接続の仕様は「マーチンスタイル」と呼ばれて多くのメーカーがコピーしています。一番オーソドックスなメーカーといえるかもしれません。高級機のメーカーですがメキシコ製のものはそれほど高いわけでもありません。

●コアロハ
現在、カマカに次ぐ人気を誇るのがコアロハかもしれません。楽器屋のウクレレコーナーに行けば普通は最低限カマカとフェイマスとコアロハは陳列されていると思います。コアロハは確かにいい音がしますし、カマカに比べれば少し安いですし、ハワイ製というのは購買意欲をくすぐることでしょう。楽器屋で新品機を弾き比べればカマカよりいい音がするかもしれません。
ただし、コアロハ、注意が必要だと思っていますので少し詳しく述べさせてもらいます。
上記のようにT'sもフェイマスもカマカも他社と異なる特徴的部分があるのですが、それは比較的小差といえます。他方のコアロハは他社と全く異なる独自路線を突っ走っているのです。オーソドックスな作りがマーチンならば、その対極にあるのがコアロハと言えるのではないでしょうか。まだ創業から20年しか経ってない新進気鋭のメーカーゆえ意欲的に新しいことを試みているようでして、その姿勢は評価できるし好感も持てますがリスクがあることも事実だと思います。
単純に考えても、他社と相当に異なる構造で、しかも会社の歴史が20年しかないということはその製品は30年、40年の寿命は保証できないでしょう。そして実際にコアロハが壊れたという話はよく聞くのです。以下、コアロハの他社と異なる特徴をまとめます。
・ライニングがない!
コアロハは表板や裏板と側板との接続補強のためのライニングがありません。ライニングは強度部材であって音色を考慮すれば省略した方がいいのかもしれません。外観からはほとんど分からないしコスト的にも有利でしょう。しかしウクレレに限らずギターでも長い歴史のあるライニングを省略すれば強度が低下するのは明らかで、多少の衝撃で表板と側板の接続部に割れが発生したという話はよく聞きます。要注意だと思います。
・標準的な横方向の力木がない。
上記フェイマスの項でも書いたように、普通は左右の側板を接続する横方向の力木が表板や裏板に設けられていますが、コアロハには(少なくとも裏板には)存在しません。この方が音はよく響くのかもしれませんが、丈夫な合板機ならまだしも強度的に劣る単板機には力木の省略は構造的に無理があるように思えてしかたありません。
・トンネル型力木
標準的な横横断の力木がない代わりに、ボディのウエスト部にトンネル型力木が設けられています。楕円穴があいた板材を力木としています。
これはダルマ型ボディの上の頭部の空間と下の腰部の空間をトンネルで通路を狭める役割があるのだと思います。したがって、下部空間で発生した振動・音響をトンネルで一度十分に絞ってから上部空間に伝え、サウンドホールから外部に開放することになり、音に奥行きと深みが増すことになるのでしょう。
また、このトンネル型力木は、普通の横方向力木の代替としているのかもしれませんが強度的にはこれだけでは不十分に感じます。
・アクイーラ弦を標準装備
ウクレレは普通は安価なGHS弦が張られて売られています。奏者のお好みで交換してください、ということだと思います。
しかし、コアロハは最初からアクイーラ弦が張られているのです。これはいい音がするのですが独特な音でもありますし、なにより特徴として「どんなウクレレもアクイーラ弦を張ればアクイーラの音になる」とも言われる個性の強い弦です。
ですから、店頭でコアロハを弾いてみて「お、これは独特ないい音だね」と思っても、それはコアロハの音ではなくてアクイーラ弦の音なのかもしれません。注意してください。
・人工象牙(TUSQ)サドルを標準装備
これもアクイーラ弦と同様に個性の強いサドルでして、標準の牛骨とはかなり違うやや硬質な音になります。ですので、コアロハの独特な音はアクイーラ弦と人工象牙によるところがかなり大きいのだと思います。
・板材
ある人から聞いた話で真偽は確かめられませんが、コアロハのウクレレは「コア単板」として売られていますが実は純粋なハワイのコアではなくて、どこか東南アジアのアカシアに近い種類の板材を使っているのだとか。アカシアとコアは同じ種類の木なのだそうで、コアが伐採できない最近はアカシアのウクレレも増えてきています。
ただしかし、アカシアなら「アカシア」と表記するべきではないでしょうか。それともアカシアとコアの中間のような材質でも使っているのでしょうか?よく分かりませんが。
ちなみに、「コアとアカシアはほとんど同じ」と言う人もいるのですが、個人的にはアカシアの音はやはりコアとは違うと思ってます。
・デザイン
パイナップルの頭のような形状のヘッド。これは単にデザインの好き嫌いの話ですね。ただ目立つことだけは確かです。

少しコアロハを批判的に書いてしまったかもしれませんが、コアロハがいい音色であることは疑いもありませんし魅力的なウクレレでしょう。ただ、購入に際しては上記のようにかなり特殊構造を採用しているし、まだ歴史の浅い若い会社であるということは十分に認識しておきましょう。

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